ソウイウモノニ ワタシハナリタイ
本物の惚けだか、ただのボケだか分らない母だった。
遊びにやって来ても、いつもそうじと片付けをやめなかった。
こどもたちは、「明日、おばあちゃんが来るよ」とおどすと、机の上のあれこれをさっさとどこかにしまっていた。コンマリ流片付けの魔法などなかったし、B型のマイペースにボケのシカトぶりが加味されて、きれいに片付いているけどそのあれこれが消えていた。仕舞には、隠し場所をゲームのように当てっこしたりした。
そんな母と暮らした4年間。「神さまに頼まれた仕事」と言っては、平和のための千人針をあきることなく刺しゅうし、サラ-ム(アラビア語で「平和」)と描かれた4枚のタピストゥリーが残された。梅雨の合間、形見の4枚を広げて虫干しした。11年前に成し遂げた母の手仕事を今、こんなにも高く、大きく掲げなければならない。
老いてもボケても、きっと輝けることがあると知った娘の支援者より