星団日記

中央市議会議員なとり義高です。

今の私を支えるもの

 日本で初めて、住民投票条例制定を求める直接請求運動が起きたのは立川市です。星団新聞37号(2015.12.1発行)で紹介しました「土地に杭は打たれても・・」の米軍立川飛行場拡張計画への反対運動が勝利した後の、1979年のことです。残念なことに制定には至りませんでしたが、基地跡地利用に関する市の態度決定に住民の希望を反映させる為のものでした。その後、住民投票を有名にしたのは、新潟県巻町の原子力発電所建設の是非を問う住民投票でしょう。’96年この結果を受けて建設中止を勝ちとっています。
 紹介した2つの事例に共通するのは、地域の未来をかけた大きな問題であること、長きに渡る純粋な市民活動であること、そして国など巨大な権力を相手としていることです。
 山梨では近年、笛吹市のアリーナ建設計画、南アルプス市の庁舎新築問題の案件でこの動きがありました。南アルプス市では、市長選に発展し後に行われた住民投票では、庁舎は新築せず増改築することが決定されましたが尚混迷が続いています。中央市でも、田富庁舎の増改築に反対する市民グループ住民投票条例案を提出し、5月19日の臨時議会で否決されました。
 これは、平成の合併がもたらしたマイナス面だと私は思います。国が主導したこの合併は、複数の町、村を一つにしました。企業合併で考えれば施設や人員を減らし、余剰資産を整理して体力を整えていくのが当たり前な事です。常に、スピードと10年20年先を観る経営判断が求められます。しかし、行政は効率と利益を優先させるものではありません。丁寧な合意形成に時間をかけ、住民の意見やニーズを大切にします。中央市庁舎市民検討委員会は、5年前の2011年すでに「新築する必要性はない」と結論づけています。市ではこの提案に基づき庁舎整備の方針を、増改築を前提として進めてきました。次ページの新聞記事にあるような旧3町村による2006年に合併した当時の協定書そのままの方針を推進出来ませんでした。理由は、新たな用地を確保して新築するには、経済情勢や市の財政状況がそれを許しませんし、道州制など更なる合併の可能性が考えられ費用対効果が低く、莫大な事業費が必要になるからです。また、現在ある庁舎の耐用年数・耐震性も充分確保されているのです。
 一方で市民の声を聴くさまざまな仕組みがあります。審議会や検討委員会、パブリックコメント制度、要望や陳情、請願等も有効な手段です。直接請求の前に多くの手段を設けています。これらを使いこなすのも大切な住民運動であり、これに応えることこそ議員の役割だと思っています。突然の請求で充分な議論の機会を作れなかったことが残念でなりません。私自身12年前、住民発議による合併の枠組みについて問う、住民投票条例を旧田富町に請求しています。この時のまっすぐな思いと行動が、政治家としての今の私を支えています。